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身体活動と健康増進 ~身体活動と運動って違うの?~
こんにちは、ゆみのハートクリニック理学療法士の相内です。
「運動は健康に良い」というのは皆さんご存知のことかと思います。
「運動」と聞いて、恐らく思い浮かぶのはスポーツやジムでのトレーニング、ジョギング、体操といった運動ではないでしょうか?皆さんが思い浮かべた「運動」も健康増進には重要ですが、今回は「身体活動」という部分に焦点を当てて「身体活動と健康増進」についてお話したいと思います。
「身体活動」とは、安静にしている状態よりも多くのエネルギーを消費する、骨格筋の収縮を伴うすべての活動をいいます。「身体活動」は大きく「運動」と「生活活動」に分けられます(図1)。そのため「運動」は、「身体活動」の中のひとつになります。
図1 身体活動の概念図
(厚労省:健康づくりのための身体活動・運動ガイド2023. chrome-extension://efaidnbmnnnibpcajpcglclefindmkaj/https://www.mhlw.go.jp/content/001194020.pdf; 閲覧日2025/3/24)
「健康づくりのための身体活動・運動ガイド2023」によると、適切な身体活動の実施は健康増進として、以下の効果があるとされております。
世界保険機関(WHO)のガイドラインによると、適切な身体活動の実施により循環器病、2型糖尿病、がんが予防され、うつや不安の症状が軽減されるとともに、思考力、学習力、総合的な幸福感を高められるとされております。
反対に身体活動の不足(身体不活動)は、全世界における死亡に対する危険因子として上位に位置づけられております。身体活動量が低くなると疾病発症・死亡のリスクが高まるため(図2)、身体不活動を改善することが健康増進のためには重要ということが分かるかと思います。
(World Health Organization: Global health risks: mortality and burden of disease attributable to selected major risks, 2009. chrome-extension://efaidnbmnnnibpcajpcglclefindmkaj/https://iris.who.int/bitstream/handle/10665/44203/9789241563871_eng.pdf?sequence=1; 閲覧日2025/3/24)
図2 身体活動量と生活習慣病発症・死亡率の相対リスクとの関係
(厚労省:健康づくりのための身体活動・運動ガイド2023. chrome-extension://efaidnbmnnnibpcajpcglclefindmkaj/https://www.mhlw.go.jp/content/001194020.pdf; 閲覧日2025/3/24)
ここまで「身体活動」の効果をお話してきましたが、冒頭でもお話した通り、「身体活動」に含まれる「運動」も非常に重要です。しかし1日中運動を行っているという方は少ないと思います。そのため1日の大半を占める「生活活動」が、健康増進に非常に重要です。
「生活活動」は、日常生活における家事・労働・通勤・通学などを伴う活動のことをいいます。そのため、運動以外に日常生活の中でどれだけ体を動かしているかが大切だと言えます。
それでは具体的にどれくらいの身体活動を目指せば健康増進に繋がるでしょうか?
この身体活動の目安は、成人と高齢者で異なります。
まず成人の身体活動の目安について説明します。
成人の身体活動としては、「3メッツ以上の強度の身体活動を週23メッツ×時間以上行うこと」が推奨されています。
・・・ん?メッツ?メッツ×時間?
「いきなり知らない単語を出すな」と怒られそうですね。笑
メッツとは、身体活動の強度を表し、安静座位時を1メッツとして、その何倍のエネルギーを消費するかを表した指標です。3メッツは、普通速度での歩行(67m/分=1秒に1m強程度)、台所の手伝いなどが該当します。
メッツ×時間は、メッツに時間をかけ合わせたもので、例えば3メッツの身体活動を1時間行った場合は、3メッツ×時間となります。5メッツの身体活動を2時間行った場合は10メッツ×時間となります。推奨されている週23メッツ×時間の身体活動の例ですが、毎日60分歩行する人はそれだけで21メッツ×時間、これに加えて週2日30分ずつ台所の手伝いをするだけで24メッツ×時間となり、推奨の身体活動量を超えることができます。毎日60分歩行と聞くとハードルが高いかもしれませんが、例えば通勤で家から駅まで15分、駅から会社まで15分を行き帰りで往復するだけで1日3メッツ×時間を達成できます。ちなみに1日約8000歩以上が1日60分以上歩行できているかどうかの目安です。
では高齢者の身体活動の推奨はどれくらいでしょうか?
成人よりもメッツ×時間が少なくなります。
高齢者の身体活動としては「3メッツ以上の強度の身体活動を週15メッツ×時間以上行うこと」が推奨されています。具体的には、毎日40分以上の歩行、1日約6000歩以上が目安です。
高齢者の場合は、上記の強度や推奨値に満たなくても、少しでも身体活動を行うことを推奨すると補足されています。例として歩行を挙げさせていただきましたが、自転車に乗る(4メッツ)、モップ掛け(3.5メッツ)、掃除機(3.3メッツ)と3メッツ以上の生活活動はたくさんあります。ブログの最後にメッツの一覧表を載せておきますので、ご参照いただけると幸いです。
最後に高齢者と成人の身体活動の推奨一覧を図3に載せます。今回は「運動」については詳しく触れておりませんが、運動の推奨もありますのでこちらもご参照ください。
図3 高齢者と成人の身体活動の推奨
(厚労省:健康づくりのための身体活動・運動ガイド2023. chrome-extension://efaidnbmnnnibpcajpcglclefindmkaj/https://www.mhlw.go.jp/content/001194020.pdf; 閲覧日2025/3/24)
内容を簡単にまとめると、成人・高齢者ともに運動だけではなく、できるだけ生活活動の中で身体活動を増やすことも健康増進に繋がるということです。
今回は「身体活動と健康増進」というテーマでお話させていただきました。「身体活動」、特に「生活活動」の重要性が少しでも伝わっていただけると嬉しく思います。
次回のブログでは、「身体活動」と反対の概念にあたる「座位行動」というものがありますので、「座位行動」についてお話したいと思います。お楽しみに!
★メッツ一覧表はこちら↓
chrome-extension://efaidnbmnnnibpcajpcglclefindmkaj/https://www.nibiohn.go.jp/eiken/programs/2011mets.pdf
訪問リハビリテーション部 理学療法士 相内