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2025年10月06日リハビリテーション

握り地蔵を見て、じっと人生を振り返る

訪問リハビリテーションは、病気や年齢を重ねることで心や体に不自由を感じるようになった方だけではなく、ご家族の希望や困りごとやそして地域特性に合わせて行います。私たちが大切にしているのは、その人が「自分らしく暮らす」ことであり、その暮らしぶりを支えていくことです。

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「自分らしく暮らす」とは、決して特別なことではありません。本人が納得して過ごせること、そして身近な人との関わりの中で役割や存在感を感じられることだと、私は思います。
今回、訪問したAさんも、かつては地域で社会活動に尽力され、外に出ることが生きがいでありました。しかし病気の進行により、「なるべくじっとして過ごす」生活へと変わっていきました。外に出たい気持ちと体調の不安で悩まれ、その狭間で気持ちが沈んでしまう日もあったといいます。

そんなAさんとこの日取り組んだのは「庭木の剪定」でした。担当の土田PTが体調に合わせて活動量「もう少しアップできそうなのか」「まだ無理をしない方が良いのか」を一緒に考えて、少しずつ広げる提案を数か月かけて「庭木の剪定」に至りました。ハサミを手にしたAさんとても頼もしい姿でした。むしろ私たちの方が、剪定の仕方を教えていただく場面もありました。年齢を重ねても、その人らしさがにじみ出る瞬間というのは、とても力強いものです。

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作業のあと、ひと息つきながらAさんが語ってくれました。30年以上にわたり、知的発達障害のある方の学びの場を作ってこられたこと。その活動のお礼としていただいた「握り地蔵」を、今も庭に飾っていること。じっとそのお地蔵様を見つめると、不思議と自分の人生を振り返るきっかけになるのだと...。その表情はこれまでの長い人生の1ページに思いを馳せる...そんな素敵な時間を一緒にすることが出来ました。

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↑実際の握り地蔵の写真です

Aさんは最後にこう話してくださいました。
「ずっと寝室から庭を眺めながら、切りたいなと思っていたのです。今日、庭に出て枝を整えることができて、本当に嬉しかった。満足です。」

訪問リハビリは、ただ体を動かす練習をする場所ではありません。その人の過去や人生の歴史にふれ、もう一度「自分らしさ」を取り戻す時間でもあるのだと、改めて教えていただきました。

担当した土田PTに日頃大切にしていることを聞いてみました。
土田「患者さんの些細な訴えや体調の変化、そしてご希望を聞き逃さないよう常に意識しながら介入を行っております。リハビリでは患者さんと一緒に目標を設定し、たとえ難しい目標であってもご希望をできる限り叶えられる方法を一緒に考えながら進めています。患者さんの笑顔や生き生きとした表情を引き出せるような関わりを持つことが、私の目標です。 」

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不確かな時代の中でも、私たちにできることは変わりません。これからも一人ひとりの「その人らしい暮らし」に寄り添い、その人らしい人生を続けるお手伝いをしていくことです。

 

訪問リハビリテーション部

渡邊

 

 

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