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2025年07月23日

待合室で箸休めの一冊に

日に日に暑さが厳しくなり、本格的な夏の訪れを感じてきました。 
暑さを乗り切るための対策は色々ありますが、一息つくのも大事なこと。
医療的なお話から少し離れて、箸休めとなる内容をご提供できればと思います。
 

みなさんは病院の待合室でどのように時間を過ごされていらっしゃいますでしょうか。
仕事をしたり、寝たり様々あるかと思いますが、ここでは読書、特に三鷹市にゆかりのある作家 吉村昭さんの『長英逃亡』を紹介させていただきます。
 

AdobeStock_417223367.jpeg 作家 吉村昭さんは、様々な時代の歴史小説を書いてきた方ですが、執筆のたびに題材とする人や出来事を自身で丹念に調べ上げて世に送り出してきました。 
では、『長英逃亡』はどのような小説かというと、時代の変換期で混乱した江戸時代後期に実在した医者・蘭学者、高野長英の半生に迫った作品です。 

高野長英が生きていた時代は、海外列強から開国を迫られている時期で、長英自身も、
今後、自分たちが生き残るために彼らとどう向き合っていくべきか真剣に考えていました。
しかし、国の存続をかけて生き残る術を考えはしても、手段が異なる人たちがそれぞれの考えを実現すべく衝突していた時期でもありました。そのような中で、長英の考え、加えて蘭学者という立場を危険視する幕府に目を付けられ投獄。
しかし、その後逃亡に至るのですが、その時期が本作には書かれています。
 
投獄期間、劣悪な環境下で苦しむ罪人の治療をしながら自身の過去を見つめ、同時に日本の未来を考えていきます。また、投獄前だけでなく、新たに出会った多くの人たちとの交流が、彼の人生に大きく関わっていきました。投獄、そして逃亡と追い詰められる日々が続く中で、自分の目的を果たすため、様々な人たちの助けを得ながら彼の波乱万丈な人生は進んでいきます。 

以上が簡単な本のあらすじです。 

現在、彼の事を知っている人はあまりいないかもしれません。
しかし、生まれたその時代を一生懸命生きた一人の蘭学者の半生を本作で見つめてみるのも楽しいと思います。特に、作者が丹念に調べ上げて紡いだ文章は、長英と時を共有し、その場にいるかのような臨場感を感じさせると思います。
 
もし、高野長英の人生に入り込んでご興味を持たれたら、作者と同じように実際の史料を調べていくのも新たな楽しみになるかもしれません。 

 

これから本格的な夏が到来しますが、今回ご紹介した本が、一息つく手助けになれば幸いです。 
 


ゆみのハートクリニック三鷹 医療事務

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